
ザガーロとアボルブの違いとは?
AGA治療での適切な選び方を専門家が解説【医師監修】
本記事はAGA治療の専門医院として20年以上の実績がある、リブラクリニックが制作したものです。
ザガーロとアボルブは、どちらも「デュタステリド」という有効成分を含んでいますが、それぞれ異なる目的で使用される医薬品です。
多くの方が、同じ有効成分であることから「実質的に同じ薬なのでは?」「AGA(男性型脱毛症)治療にどちらを使っても良いのでは?」といった疑問を抱かれるかもしれません。
しかしこの二つの薬剤には明確な違いがあり、特にAGA治療においてはその違いを理解し、適切に選択することが極めて重要です。
本記事ではザガーロとアボルブの基本的な違い、開発された背景、効果や副作用、費用面での相違、そしてAGA治療における適切な薬剤選択の根拠について、専門的な観点から詳しく解説していきます。
この記事の監修者
座右の名は「努力こそ金なり」、趣味は釣り。
ザガーロとアボルブの基本的な違いと開発背景
主な違いを一覧で確認
項目 | ザガーロ | アボルブ |
---|---|---|
有効成分 | デュタステリド0.5mg | デュタステリド0.5mg |
製造販売元 | グラクソ・スミスクライン社 | グラクソ・スミスクライン社 |
日本での承認された適応症 | 男性型脱毛症 (AGA) | 前立腺肥大症 (BPH) |
AGA治療への使用 | 承認 | 適応外 |
前立腺肥大症治療への使用 | 適応外 | 承認 |
保険適用 (承認された適応症の場合) | AGA治療は自費診療 | 前立腺肥大症治療は保険適用あり |
医薬品副作用被害救済制度の対象 | AGA治療目的で使用した場合に対象 | AGA治療目的で使用した場合は対象外 |
この表からも明らかなように、有効成分や製造販売元は共通しているものの、日本国内で承認されている使用目的(適応症)が根本的に異なります。
なぜ同じ有効成分で2つの薬が存在するのか?
元々、デュタステリドは前立腺肥大症の治療薬として開発が進められ、日本では「アボルブカプセル」という商品名で2009年に厚生労働省から承認されました。
その後、デュタステリドが男性型脱毛症(AGA)に対しても効果を示すことが臨床研究などで明らかになりました。
AGAは、男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロン(DHT)が毛乳頭細胞に作用し、毛髪の成長期を短縮させることで薄毛が進行する疾患です。
デュタステリドは、このDHTの生成に関わる酵素(5αリダクターゼ)を阻害することでAGAの進行を抑制し、発毛を促進する効果が期待できるとされました。
このAGAへの効果が確認されたことを受け、グラクソ・スミスクライン社はデュタステリドをAGA治療薬として改めて開発し、必要な臨床試験等を経て、2015年に「ザガーロカプセル」として男性型脱毛症の適応で製造販売承認を取得しました。
AGA治療における効果と副作用の違い
AGA治療への効果:デュタステリドの作用は同じ
ザガーロもアボルブも、有効成分として0.5mgのデュタステリドを含有しています。
デュタステリドは、AGAの原因となるジヒドロテストステロン(DHT)の産生を抑制することで効果を発揮します。
具体的には、テストステロンをDHTに変換する酵素である5αリダクターゼの『Ⅰ型』と『Ⅱ型』の両方を阻害する作用を持ちます。
この作用により頭皮中のDHT濃度が低下し、毛髪の成長期が延長され、抜け毛の減少や毛髪の質の改善(太く硬い毛の成長)が期待できます。
理論上、有効成分が同一であるためアボルブをAGA治療に使用した場合でも、ザガーロと同様の薬理効果が得られると考えられます。
しかし、重要なのはアボルブはAGA治療薬として臨床試験が行われ、承認されたわけではないという点です。
ザガーロはAGA患者を対象とした臨床試験で有効性と安全性が評価され、その結果に基づいて承認されています。
副作用は基本的に同一だが、医薬品副作用被害救済制度の対象が異なる
ザガーロとアボルブは有効成分がデュタステリドで同一であるため、起こりうる副作用の種類も基本的には同じです。
デュタステリドの服用によって報告されている主な副作用には、性機能障害(勃起不全、リビドー減退、射精障害など)、肝機能障害、気分の落ち込み、乳房の圧痛や腫れ、アレルギー反応(蕁麻疹など)があります。
しかし、ここで極めて重要な違いがあります。それは、アボルブをAGA治療という承認された適応症以外(適応外)の目的で使用し、万が一重篤な副作用が発生した場合、国の「医薬品副作用被害救済制度」の対象とならないという点です。
この制度は、医薬品を適正に使用したにもかかわらず発生した重篤な健康被害に対して、医療費や障害年金などを給付するものです。
『医薬品副作用被害救済制度』について詳しくは、下記サイトをご覧ください。
医薬品副作用被害救済制度 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
費用と保険適用の違い
ザガーロを用いたAGA治療は、日本の公的医療保険の適用対象外であり、原則として全額自己負担の自由診療となります。
AGAは生命に直接関わる疾患とは見なされず、容貌に関する治療と位置づけられるため、保険診療の範囲外とされています。
一方、アボルブは、承認された適応症である前立腺肥大症(BPH)の治療目的で医師から処方される場合には、公的医療保険が適用されます。
この保険適用の違いから、「アボルブを安く手に入れてAGA治療に使えないか」と考える方がいるかもしれませんが、これは極めて危険です。
前述の通り、アボルブをAGA治療の目的で使用することは適応外使用にあたり、万が一副作用が発生した際に医薬品副作用被害救済制度の対象外となるリスクがあります。
費用負担軽減の目的の場合、ジェネリック薬品を推奨
AGA治療の費用負担を軽減したい場合、より安全で適切な選択肢は、ザガーロのジェネリック医薬品(後発医薬品)であるデュタステリド錠などを利用することです。
ジェネリック医薬品は、先発医薬品であるザガーロと同一の有効成分を含み、同等の効果と安全性が国によって確認されており、かつ薬価が低く設定されています。
ザガーロのジェネリック医薬品もAGA治療薬として承認されているため、医薬品副作用被害救済制度の対象となります。
AGA治療にアボルブを使用することのリスクと推奨される選択
アボルブ使用の法的・健康上のリスク
結論から述べると、AGA(男性型脱毛症)の治療目的でアボルブを使用することは推奨されず、多くのリスクを伴います。
- 適応外使用による法的保護の欠如:アボルブは日本ではAGA治療薬として承認されていない。また、重篤な副作用が発生した場合に「医薬品副作用被害救済制度」の対象とならない
- 安全性データの相違:ザガーロはAGA患者を対象とした臨床試験で安全性と有効性が確認されている。また、アボルブがAGA患者に対して長期間使用された場合のデータは、ザガーロほど蓄積されていない
AGA治療でザガーロ(またはデュタステリド錠)を選ぶべき理由
- AGA治療薬としての正式な承認:ザガーロは、日本の厚生労働省によって男性型脱毛症(AGA)の治療薬として正式に承認されています。
- 医薬品副作用被害救済制度の対象:ザガーロを医師の指示通りにAGA治療の目的で使用し、万が一重篤な副作用が発生した場合には、国の救済制度の対象となります。
- 適切な医療情報と指導:ザガーロの処方時には、AGA治療に特化した用法・用量、期待される効果、注意すべき副作用などについて、適切な情報提供と指導を受けることができます。
- ジェネリック医薬品による経済的負担の軽減:ザガーロには有効成分、効果、安全性が同等であると国に認められたジェネリック医薬品が存在し、経済的な負担を軽減できます。
ザガーロ(デュタステリド)服用の際の注意点
ザガーロを安全に使用するためには、以下の重要な注意点があります。
- 女性・小児の服用禁止、取り扱い注意:成人男性専用の薬剤であり、特に妊娠中または妊娠の可能性がある女性は、カプセルの内容物に触れることも避ける必要があります。
- 肝機能障害のある方への注意:デュタステリドは主に肝臓で代謝されるため、肝臓に持病がある方は服用前に必ず医師に申し出てください。
- 前立腺がん検査(PSA検査)への影響:デュタステリドを服用すると、PSA値が約50%低下するため、検査を受ける際には必ず担当医に伝えてください。
- 献血の制限:ザガーロを服用中の方、および服用中止後6ヶ月間は献血ができません。
AGAや治療薬に関する相談について
AGA治療を検討するにあたり、治療効果への期待と同時に副作用や費用、自分にとってどの治療法が最適なのかといった多くの疑問や不安が生じるのは自然なことです。これらの悩みを一人で抱え込まず、専門的な知識を持つ医師に相談することが、解決への第一歩となります。
リブラクリニックでは、AGA治療に関する専門的な知識と豊富な経験を持つ医師が、オンライン診療を通じてご相談に応じています。患者様お一人おひとりの状況を丁寧にお伺いした上で、最適な治療法をご提案いたします。
まとめ:正しい理解に基づく安全で効果的なAGA治療を
ザガーロとアボルブは、どちらも「デュタステリド」を有効成分とする医薬品ですが、日本で承認されている適応症が異なります。
有効成分が同じであるため、薬理作用や潜在的な副作用の種類は基本的に同一です。しかし、AGA治療の目的でアボルブを使用することは適応外使用となり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となるという重大なリスクがあります。
AGA治療でデュタステリド製剤を使用する場合は、AGA治療薬として正式に承認されているザガーロ、またはそのジェネリック医薬品を選択することが、安全性と有効性の観点から最も適切です。
当院で取扱の薬品
当院では国内正規品のグラクソ・スミスクライン株式会社のザガーロカプセルを処方しております。処方や服用方法に関して詳しくは下記ページをご覧ください。
ザガーロ(デュタステリド)の効果や副作用、服用方法と注意点を解説【医師監修】
また、ザガーロジェネリック(デュタステリド錠/カプセル)も取り扱いしております。処方や服用方法に関して詳しくは下記ページをご覧ください。
当院で取扱のザガーロジェネリック(デュタステリド錠/カプセル)(東和薬品株式会社/Me ファルマ株式会社)
当院では電話での問診にてオンライン診療を実施しております。来院不要でかかる費用はお薬代のみですので、お気軽にご相談ください。